VOICE

PROFESSIONAL’s VOICE Pro.05

[Special Talk Session] 横田 知朗 × 海藤 裕司

豊かな暮らしは住まいだけでは成し得ないもの。お客様それぞれの理想のライフスタイルを実現する空間を提供するためには、暮らしに関わる多様な分野との接触で、さまざまな着想を得ることが大切です。

横田知朗代表の旧知の恩師でもあり、建築家として、日本設計の執行役員札幌支社長を務める海藤裕司さんをお招きし、「これからの札幌の建築と風景」をテーマに、お話しいただきました。つくり手たちが伝えたかった想いや考えに、ぜひご注目ください。

豊かな暮らしは住まいだけでは成し得ないもの。お客様それぞれの理想のライフスタイルを実現する空間を提供するためには、暮らしに関わる多様な分野との接触で、さまざまな着想を得ることが大切です。

横田知朗代表の旧知の恩師でもあり、建築家として、日本設計の執行役員札幌支社長を務める海藤裕司さんをお招きし、「これからの札幌の建築と風景」をテーマに、お話しいただきました。つくり手たちが伝えたかった想いや考えに、ぜひご注目ください。

ワンチームで取り組む現場で知ったモノづくりの真髄

海藤
初めて出会ったのは、今からさかのぼること26年ほど前。私が設計を担当した案件で、横田さんは現場の副所長として働いていました。お互い、まだまだ発展途上で若く、尖っていました(笑)。

横田
予算の規模もとても大きく、技術的にもクライアント対応にも大変な現場でしたね。現場の最前線に立ち、会社の垣根を超えて無我夢中で働いた日々が、昨日のことのように思い出されます。

海藤
いろいろな壁や困難に直面しましたが、横田さんは不完全な設計図を読み解き、さまざまな角度から検討し、暗い道を照らすような提案をしてくれました。設計者に歩み寄り、調整を重ねながら丁寧に計画を実現してくれる。今にして思えば、当時の私にはそういう役割をしてくれた横田さんのような人がいて初めて、自分の仕事が進められたのだと思います。

横田
海藤さんは当時から自分なりの正しさを持ち、それを真っすぐに貫く強さを持ちながら、常にクライアントに対して誠実であり続けました。その揺るぎない姿勢でそれぞれの役割、責任を果たすことが、チーム作業で行う現場の進行をスムーズにすることも学びましたし、その経験が、私の会社経営の基本になっていると感じています。

海藤
その現場以降、現場で一緒になることはなかったけれど、7〜8年前に偶然、共通の知人のパーティーで再会。当時の記憶が脳裏によみがえり、リスクを負う冒険をしなくなった今の自分にふと気づいたりもしていました。

横田
再会して間もなく、抱えていた個人住宅の現場がウッドショックと呼ばれた木材の高騰、品不足で立ち行かなくなり、海藤さんに助けを求めたら、我々が直取引できない商社の木材事業部を紹介してくれたんですよね。それから、海藤さんはモノづくりの心強い相談役になりました。

海藤
2019年には設計を担当したマウレ山荘の日帰り入浴施設の工事で、横田さんには躯体と内外装を手がけてもらいました。久しぶりに一緒に仕事ができて、嬉しかったです。

まちと暮らす人々に潤いをもたらす点と面のデザイン

横田
2020年から海藤さんは、建物の設計からまちづくりへと仕事の軸足を移されましたね。どんな思いから、まちづくりに目を向けられたのでしょうか。

海藤
長年、建物の建築設計に携わってきましたが、建物だけ見ているとその先の展開、未来が見通せないような感じがしまして。たくさんの人の生活が都市の中で展開されている中で、人々はどう動くのか。その場所と建物はまちにどうあるべきか。建物と緑化、人が集う空き地、それらを総合的に俯瞰しながら、都市というフィールドで人の流れをデザインしてみたいと思ったんです。

横田
つまりは、建物という「点」ではなく、都市全体「面」をデザインするということでしょうか。

海藤
例えば、近年の事例でいえば麻布台ヒルズから虎ノ門ヒルズには緑の流れが連続して計画されています。また、弊社で関わった事業では、赤れんがテラスの北3条広場を整備し、札幌らしい都市景観と市民や観光客のにぎわいを創出しました。札幌は緑が多いようで、東京に比べると都心部の緑がまだまだ大切にされていない気がします。現在、手がけている札幌都心の大型プロジェクトでは、札幌都心部でも緑の連続性を積極的に生かしたプランを展開させる予定です。

横田
私が手がけている住宅はいわゆる点の仕事ですが、その小さな点が地域にどのようなインパクトを与える存在になるのか、いつも俯瞰して計画しています。無機質になりがちな外観に潤いと豊かさを与える緑や花も重要なエレメントです。個人の建物ではありますが、ファサードは公共性を持つものなので、都市の顔にもなる。美しさはもちろんですが、同時に晴れやかさや安心感を醸し出すデザインでなければいけないと思っています。また、建物の動線や採光、生活音への配慮などを重ね、住まう人の暮らしにより良い流れを実現することも大切にしています。

海藤
住宅は計画から長くて2年、都市再開発は最低でも10年と、時間軸こそ大きく異なりますが、どちらもまちとそこに暮らす人に対してどうあるのが最適解なのかが問われているのです。点も面も、デザインの本質は同じものだと思っています。

豊かな想像力と経験はデジタルに勝る武器

横田
昨今のデジタル技術の進化で、これまで時間がかかっていた確認申請がBIM申請に替わり、スピーディーに法的チェックも行われるようになります。その分、本質的に建築はどうあるべきかが、今後は設計者により委ねられるようになると感じています。

海藤
生成AIの発達に伴い、パースだって瞬時に何パターンも出来上がってしまいます。とはいえ、AIはあくまでも道具の一つにすぎません。その方向性を定める設計者の資質が浮き彫りになってしまうでしょう。作業の省力化、時短化が進む一方で、仕事に対する時間の使い方がより濃密になっていくのではないでしょうか。

横田
今よりも少ない人数で質の高い仕事ができるからこそ、想像力を失わないようにしないとボタンの掛け違いが起きてしまう危険性をはらんでいます。デジタルは万能ではないと自らを戒めていますね。

海藤
首都圏では新しいモノが次々とできています。私たちもメディアに頼らず、自分の足と目を使ってスケール感や設計意図を確かめ、話を聞くことを今まで以上に大切にしないといけませんね。

横田
私たちが初めて出会った頃を振り返ると、建築業界を取り巻く環境は著しく変化しています。持続可能な家づくり、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指してさまざまな取り組みも積極的に進めています。都市計画においてはいかがですか。

海藤
札幌にはまだ自身でエネルギーを持たないビルがたくさんあります。太陽光、地中熱、風、雪など自然エネルギーや水素を活用しながら、さらに一歩進んだカーボンマイナスを目指していきたいと考えています。そのための制度づくりも考えていきたいですね。

横田
こういう時代だからこそ、次世代を担う人たちにもっと積極的に建築に関わってほしい。私たちの若い頃よりもずっとチャレンジしやすい環境が整っていますから、今がチャンスです。

海藤
つくったモノが使われながら、まちに残っていくという魅力に気づいてほしいですね。その面白さを体感できるような環境を整えるのが、我々シニアの役目。私たちは彼らの良き伴走者でありたいと思っています。

海藤 裕司(かいどう ゆうじ)さん
株式会社日本設計 執行役員札幌支社長

室蘭工業大学工学部建築工学科卒業、設計事務所勤務を経て、2020年に株式会社日本設計入社。以来、本社・建築設計群、札幌支社に所属し、PFI事業やさまざまなプロジェクトの基本計画、再開発事業等に携わる。2023年4月より札幌支社長に就任。北海道の気候風土に根ざした設計によって、当麻町役場で北海道赤レンガ建築賞、伊達市総合体育館での北海道建築奨励賞などを受賞。現在は札幌都心部でのまちづくりプロジェクトに参加し、サステナブルな都市開発に取り組んでいる