VOICE

PROFESSIONAL’s VOICE Pro.03

[Special Talk Session] 横田 知朗 × 新沼 彰人

豊かな暮らしは住まいだけでは成し得ないもの。お客様それぞれの理想のライフスタイルを実現する空間を提供するためには、建築業界のみならず、暮らしに関わる多様な業界との接触で、さまざまな着想を得ることが大切です。

STARR WEDGEでは、異業種のプロフェッショナルをお招きし、家づくりの先にある豊かな暮らしづくりについて、横田 知朗代表とお話いただきます。今回のゲストは、北海道の電気の安定供給を担う北海道電力で執行役員を務める新沼彰人さんです。建築家と施主として始まった関係が、十数年経つ今まで続いてきた背景には、お互いの哲学への共感、そして地域の会社としての責任を果たすという共通の理由がありました。

豊かな暮らしは住まいだけでは成し得ないもの。お客様それぞれの理想のライフスタイルを実現する空間を提供するためには、建築業界のみならず、暮らしに関わる多様な業界との接触で、さまざまな着想を得ることが大切です。

STARR WEDGEでは、異業種のプロフェッショナルをお招きし、家づくりの先にある豊かな暮らしづくりについて、横田 知朗代表とお話いただきます。今回のゲストは、北海道の電気の安定供給を担う北海道電力で執行役員を務める新沼彰人さんです。建築家と施主として始まった関係が、十数年経つ今まで続いてきた背景には、お互いの哲学への共感、そして地域の会社としての責任を果たすという共通の理由がありました。

経営者としての哲学に共感し期待を寄せた起業前夜

新沼
今でこそ大切な友人ですが、最初は施主と建築家という立場での出会いでした。横田さんがまだ独立する前からの付き合いになりますね。

横田
新沼さんは家づくりに対して情熱を持っていたし、強いこだわりもありましたから、打ち合わせを何度も繰り返して。今振り返っても非常に濃厚な日々でした。

新沼
横田さんは私の不躾な質問に対しても丁寧に説明をしてくれたのを覚えています。時には私の素人意見を柔軟に受け入れて、既成概念にとらわれることなく挑戦してくれたり。私自身も学ぶことが多く、家づくりというよりも共同プロジェクトのような気持ちで進めていました。だから、完成したときは喜びと同時にとても寂しかったです。

横田
確かに共同プロジェクトでしたよね。でも、あの濃厚な家づくりをきっかけに、今もずっと関係が続いているのは非常に嬉しいです。そもそも新沼さんはスター・ウェッジを立ち上げる際も、事業計画書の作成を手伝ってくれましたから。

新沼
懐かしいですね!横田さんは独立前から哲学を持っていましたよね。「会社は社会的な存在である」ということを常に言っていて、利益のために会社があるのではなく、お客様も地域もステークホルダー全体が幸福であるべきだ、という哲学を当初から持っていました。そして、価値そのものの本質を捉えた価値哲学もきちんと持ち合わせていて。立ち上げの手伝いをしながら横田さんの話を聞いているうちに、『面白い会社になりそうだな』と期待したのを覚えています。

横田
確かに哲学はあの頃からずっと私の中にあります。そして、これからもずっと続いていくものだと思っています。

新沼
私が勤めているほくでんも、横田さんの哲学とかなり通じるものがあるんです。会社は社会的存在であり、利益はもちろん大切だけれど目的ではありません。地域を支え、お客様に喜んでもらう活動こそが地域企業のあるべき姿で、利益は活動を支えるための手段であり、決して目的ではないんです。私自身、こうした理念のある企業に籍を置いているので、横田さんの哲学にもシンパシーを感じる部分はかなり多かったです。

建築家とエネルギー会社が考える脱炭素時代

横田
御社はまさに社会的存在ですよね。建築家とエネルギー会社、業界は異なりますが通じるものは多々あります。脱炭素時代を迎えた今、私たちはそれぞれ立場は違うけれど、向き合うべきものは同じですし。

新沼
エネルギーは、安全(Safety)を前提に、安定供給(Energy security)、経済性(Economic efficiency) 、環境(Environment)が加わった「S+3E」が基本的な視点となっています。地域企業として、私たちは産業を守っていかなくてはならないので、経済性は本当に大切で。エネルギーコストを抑えることは重要なことなんです。しかしながら、環境面を考えるとコストは上がってしまいます。エネルギーは空気のようにどこでも手に入るものではないので、安定供給を一番に考えながら環境と経済性のバランスを取り、カーボンニュートラルを進めていかなくてはならないんですよね。

横田
住宅業界も国がZEHを推進していますし、これからは高性能住宅が当たり前になってきます。弊社も新しいモデルハウスを含め、ZEH Orientedを標準仕様としています。カーボンニュートラルの実現には蓄電池が外せませんし、さらなるイノベーションも不可欠です。建築の本質的な部分は変わらないので、そこにいかにイノベーションされた技術を取り込んでいくのかが大切だと思っています。

新沼
車のEVシフトが進んでいますが、住宅も電化にさえしていただければ、カーボンニュートラルは実現する、というのが私の考えです。弊社は電気の供給側で、2030年には半分以下、2050年までにCO2排出ゼロを目指すことをコミットメントしています。車の耐用年数が10年程度だとすると、2050年までには2台、3台と乗り換えのタイミングがあるので、EVシフトは徐々に進めることができるでしょう。対して、今建てた住宅はよほどのことがない限り、2050年になってもその状態のままです。車のEVシフトよりも大きな流れを、住宅分野は進めていかなければならないですし、エネルギー会社としても力を注いでいかなくてはならないと思っています。

技術も、価値観も進化する世界への期待

横田
御社は電化に対して新しい取り組みもされていて、「スマート電化」もその一つですね。

新沼
スマート電化では、給湯や暖房にヒートポンプ機器を使い、キッチンにIHクッキングヒーターを使う省エネルギーな暮らしを提案しています。特にヒートポンプは空気中や地中にある熱エネルギーを有効活用しますから、使用する電気エネルギーの2倍以上の熱エネルギーを得るため、電気使用料を大幅に削減できます。ほかにも、IoTやAIなど最新のデジタル技術を活用した新たなサービスも展開中です。 

横田
ほくでんも、次々と新しい技術を開発していますよね。弊社の新モデルハウスも電化で、会社として「カーボンFプラン」も採用しています。

新沼
カーボンFプランは使用する電気のCO2排出量を実質的にゼロにするものです。水力発電所などの再生可能エネルギー電源由来の環境価値を活用しますので、再生可能エネルギー100%の電気を使う、ということになります。いわゆるプレミアを払って環境価値を買う、ということですね。カーボンニュートラルを目指していく中で、価値観や技術を含めて、大きく世界が変わっていくでしょうね。

横田
スター・ウェッジのモデルハウスのコンセプトは「Sustainability」。持続可能なデザインです。木材や塗料など環境性能の高いものをきちんとエビデンスを取ったうえで、選択していく。これがこれからの建築家の役割の一つだと思っています。ここに、イノベーションされた技術を取り入れることができれば、と考えるのが実は楽しみでもあるんです。

新沼
課題は確かに多いけれど、やはりワクワクしますよね。ポジティブからブレイクスルーは起こりますからね。スター・ウェッジの成長を間近で見てきましたが、クリエイティブな力を感じられてとても刺激になっています。

横田
こちらこそ、新しい挑戦をしようと考えたときに一番最初に相談するのが新沼さんですから。私の視野を広げてくれるので、会話から着想を得ることも多いんです。家、地域、日本、世界。話題はミクロからマクロへと発展しながら、ワクワクさせてもらっています。


新沼 彰人(にいぬま あきと)さん
北海道電力株式会社 常務執行役員
紋別市生まれ。法政大学社会学部卒業。1985年に北海道電力に入社し、現職に至る。北海道電力は、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、北海道が持つ資源のポテンシャルを有効活用することによる電源の低炭素化や再生可能エネルギー発電の拡大に努めている。同社が進めている省エネで快適な暮らしを支えるスマート電化も、脱炭素において重要な役割を担っている